グノーブル 卒業生インタビュー Part 3
司法試験の早期合格には、
グノの数学的思考が土台にあった。
9月10日、法務省が今年度の司法試験の結果を発表しました。受験者総数は4466人。最終合格者数は1502人。合格率は約34%という狭き門でした。最年少の合格者は平栗成悟さん20歳。グノーブルの11期生です。苦手意識のあった数学を、中3からグノーブルで受講。受験学年では盤石な力をつけ、東大か、慶應大法学部(指定校推薦)かで悩んだ末、少しでも早い司法試験合格ルートを探り後者を選択。その目標を見事達成されました。そんな平栗さんは、グノーブルの数学から多くを学んだとおっしゃいます。
11期生
平栗 成悟さん
(麻布/慶應大学法学部3年)
母親の姿を見て大学在学中に合格を目指す
中学3年生の時に母親が司法試験を受けて合格したんです。もともと興味があって夢として持っていたそうです。ただ、大変な道なのでその夢には蓋をしていたそうですが、僕と妹の子育てが一段落してきたタイミングで一念発起して、ロースクールに入って勉強しようと思ったと聞きました。周りの母親を見ても、仕事を持っている人はいますが、さすがに学生をやっている人はいません。しかも目指しているのが司法試験です。最初の頃は「何をやっているんだろう」と思いましたね(笑)。でも、そうした姿を見ていて、僕も法曹の道を志そうと思ったんです。ところがその後、母が就職活動をしているのを見て、「司法試験は早く受かるほうが絶対有利だ」と思い、「どうせならロースクールにはいかず大学在学中に合格して、いろいろな分野の法律を見て自分のやりたいことを探そう」と決意したんです。
実質的に司法試験に向けた勉強を始めたのは高校3年生の3月ぐらいからです。予備校で大学1年生向けの講座を受けたのが最初でした。大学1・2年生の時は週3回〜4回くらい予備校に通って、1回の授業が3時間。家でやるのは復習と問題演習ぐらいでした。1日10時間やっていた時期もありましたが、大学の勉強との兼ね合いが大変で2か月ぐらいしか持ちませんでした。それ以降は1日に5、6時間の勉強をずっと続けることを意識して、休む日をつくらないようにしていました。
予備試験ルートならキャリア形成が有利になる
実際の司法試験そのものはそこまでハードルが高くなくて、実は、司法試験を受けるための“資格を得ること”のほうが大変なんです。司法試験の資格を得るためには、予備試験を受けて合格するか、ロースクールを卒業するかのふたつのルートがあります。予備試験は合格率が3%〜4%しかなくて、そこを乗り越えられれば司法試験はほとんど受かります。予備試験のスケジュールとしては、5月にマークシートの短答式試験があって、7月に論文式試験、10月に口述試験という面接のような試験があります。最難関は論文試験です。最初のマークシートの試験で2割しか受からないのに、論文はさらにその中の2割の人しか受からない難しさで、僕は運良くそれに受かりました。ここまで受かってしまえば口述試験は9割の人が受かります。予備試験合格者で20歳〜24歳であれば、司法試験合格率は98%ぐらいありますので、やはり最難関は予備試験だと思います。一方、ロースクールについては実体験がないので詳しいことは言えませんが、卒業するまでに単位を取りづらい試験制度をつくっているみたいです。特に大学で法律を履修されてこなかった人が3年で卒業するのはかなり大変だと聞いています。
予備試験ルートの良いところは就職が有利になるところでしょう。大手の法律事務所では、予備試験合格者向けの説明会やインターンを設けていて、そこに参加できるのは大きな経験になります。裁判官、検察官を目指す人であっても、印象がいいみたいです。また、本番の司法試験を目指すにあたっても、予備試験は司法試験のミニチュア版になっているため、それを早い段階から演習してこなせるようになると、どのような部分が大切なのかを把握でき、答案を書くことに慣れることができます。それが司法試験の圧倒的な合格率につながっていると思います。ただロースクールにもメリットがあって、実務家教員として現役の弁護士や検察官や裁判官が教えにきてくれるんです。最先端の話を聞くことができるので、そのような機会を得られなかったことは残念でした。
友人との切磋琢磨があったから乗り越えられた
大学生活との両立はかなり大変でした。大学1年生の時はどちらも疎かにしたくなかったので、大学の授業は風邪をひいた時以外は全部出席しました。そこでしか得られない気づきがありますし、語学の力は司法試験の勉強では身につきません。大学でそのような勉強ができたのは良かったと思っています。定期試験の時は少しだけ司法試験の勉強をお休みして、大学の勉強に集中しました。法律科目については予備校で学んでいることと重複していることが多いので、そこまで必死に対策する必要はありませんでしたが、語学と一般教養に関しては頑張りました。睡眠時間を少し削ったこともあります。
とはいえ、プライベートの時間が全くなかったわけではありません。趣味のイベントに参加したり、ライブに参加して騒いだりして、ストレスを発散していました。大学のサークル活動にも興味があったのですが、予備校の時間と重なったり、合宿などでその期間中は勉強できないことを考えてしまうと、次第に足が遠のきました。
自分では、制約の多い過酷な環境に対する耐性はあまりないほうだと思っているんです。それでも頑張れたのは、一緒に勉強していた友達がいたことです。大学の同級生で予備校も一緒です。とても優秀で意欲もあります。彼らが毎日勉強する姿を見ると、「負けていられない!」という気持ちになりました。勉強を少し疎かにしていた時も、彼らと話しているうちに「もっと頑張らないといけない」と思うことがありました。もし自分一人だったら、ズルズルと身にならない勉強をしていたかもしれませんね。
僕が通った予備校には慶應生がとても多くて、特に内部進学生は中高で受験を経験しなかった分、意欲的に取り組んでいました。彼らはこれまで受験勉強をしてこなかったわけですが、もともと頭が良いので、司法試験の勉強もすごい勢いで取り組んでいました。そのような人たちと常にコミュニケーションをとれる環境があることが慶應生のとても良いところだと思います。一方、東大生は自分一人で勉強する傾向があって、個々に散らばっている印象がありました。僕の場合は慶應のコミュニティで仲間ができたことが良かったと思います。
塾選びも進路も自分のことは自分で決めた
東大文Tを受験しなかったことに「全く後悔がない」といえば嘘になります。グノーブルの長澤先生のもとで数学を学んでかなり自信がついてきていたので、試験を受けて実力を試さなかったことには少し後悔があります。でも東大に入っていたら入学と同時にはじけてしまい、きっと司法試験の勉強を真剣にしなかったんじゃないかとも思っています。今から思えば、入るべくして慶應大法学部に入ったのです。
塾や進路の選択について両親は何も言いませんでした。夏休みに指定校推薦を受けるかもしれないと話をした時に「東大を受験しなくていいの?」と聞かれたぐらいです。絶対に東大に行きなさいなどと言われたことはありません。「自分で決めたことならそれでいい」、両親は常にそういうスタンスでした。
両親から勉強や進路に深く介入されなかったのは良かったと思っています。自分で決めたからこそ、小さな後悔があったりしても「精一杯やりきった」という気持ちになれました。もし、あれこれ言われていたら、大学に入ったあとも「やっぱり東大を受験してみたかった」という思いが強くなって、それを人のせいにしながら、ないものねだりを続けていたかもしれません。決して放任ではありませんが、大事な局面での選択は塾選びの段階から委ねられていましたし、自分の頭でしっかり考えて、自分の意志で決める経験を、早くからさせてくれた両親に感謝しています。
成長させるために厳しく接してくれた
学校の勉強の中で、数学が非常に苦手でこれはちょっとまずいと思い塾を探しました。希望していたのはわからない人にでも寄り添ってくれるような塾です。その中で、グノーブルはむやみに早く授業を進めるのではなく、学校より少し早いぐらいと聞きました。それと、夏期講習に通ってみて、中学受験の時に通っていた塾に雰囲気が似ていたことも入塾の決め手になりました。
中学3年生で入室して、最初に教えていただいたのは物理も教えている岡ア先生です。とても優しくて、真面目に努力したら、ちゃんと努力したところを見てくれて、足りていない部分を教えてくれる。自分がイメージしていた塾より、ずっと生徒に近い塾だと思いました。グノーブルの入り口が岡ア先生だったことで無理なく通うことができました。その後、田部井先生にも1年ぐらい習いました。とても気さくで無理やり感のない先生でした。そこで、トレーニングを積むことができ、良かったと思っています。
高校2年生で長澤先生のクラスになってからは、同じ教科とは思えないほど周りとは違うことをしていた印象が強くあります。厳しくて何度も逃げ出したくなりました。予習は毎週10問もあって、一つひとつの問題がかなりハードでした。頑張って10問解いて提出しても「先週勉強した範囲をまるで理解していない」と言われて、つらい気分になったことはよくありました。
長澤先生の言い方に、人によっては腰が引けてしまう人もいると思います。それでも先生が生徒に厳しく接するのには理由があるんです。厳しい言葉で指摘するのは、無用な“自尊心”のようなものを生徒に捨てさせて、足りない部分を謙虚に埋めるために言っているので、そこを理解しなくてはいけません。そのようなやり方で、数学と謙虚に対峙させてくれるだけでなく、人間的な成長まで導いてくれる大人はそんなにいません。生徒が本質的な力をつけるという授業スタイルをつくっているのは、他の塾ではあまり聞いたことがありません。そういうスタイルを許容しているグノーブルはさすがだと思います。
司法試験突破の土台を築けた
グノーブルで学んだ数学は受験のための数学でしたが、僕が司法試験の時に気をつけていた点のほとんどはグノーブルで学んだと思っています。グノーブルで学んだ数学の土台は、司法試験の勉強を進めていく上での土台にもなったと実感していました。
例えば、演繹法と帰納法という推論方法がありますよね。具体と抽象の架け橋という面で、グノーブルの授業は最初に演繹的な方法で大きなテーマに沿っていきます。つまり、抽象的なところから次第に具体的な面へ絞っていくスタイルです。そのスタイルの良いところは「元の考え方がこうだから、このような流れになる」というのがわかりやすい点です。そこがつかめると一番のおおもとのポイントを押さえておけば良いと理解が早まります。最初から具体的に問題を並べ一対一対応で眺めるよりも、そのおおもとにある原理原則をしっかり把握しておけば最小限の暗記で最大限の効果が得られる。それは司法試験も同じなんです。
論点自体は様々あるわけですが「そこがどうして問題になるのか」というおおもとに遡って見るよう意識してみると「根底にこのような考え方があるから、こうした論点がでてくる」という理解につながってくる。そのように、一つひとつの問題を個別に考えるのではなく、大きな観点で考えるくせをつけられたことが、司法試験にいち早く合格したことにつながっていると思います。
専門分野を見極めて世界で活躍できる弁護士に
残りの学生生活では、少し休んで充電したいと思っています。旅行にも行ってみたいです。ヨーロッパを回ったりするのもいいかなと思っていますし、自由な時間のあるうちにできることをしたいです。あとは、弁護士として働く中で英語が必要となってくるので、仕事で使う英語を習得したいと思っています。
今、法律事務所でアルバイトをしているのですが、そこで法律の観点から、いろいろな世の中のトラブルを見る経験をさせていただいています。そのアルバイトを続けて自分の法律知識がさびつかないようにしながら、就職までにより実践に近い法律の使い方を学んでいこうと思っています。
実は卒業後の就職先も決まっていて、企業法務に強い事務所に就職します。企業法務にもいろいろとありますが、最初の数年間は多様なジャンルを経験してみようと思っています。周りから見れば、成長が少し遅いように感じるかもしれませんが、いろんな分野をじっくり見て、自分に何が向いているのかを、自分の身をもって知りたいんです。その中で専門にしたい分野ができたら、今度はそれに向き合っていこうと思います。また自分が希望すれば、アメリカのロースクールに留学したり、ローファームで働いたり、様々な経験を積ませていただけるので、ワールドワイドに活躍できる、大きな弁護士になっていければいいなと思っています。