グノーブル 卒業生インタビュー Part 1

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グローバルに活躍できるM&Aのプロフェッショナルになりたい。
そのために、さらなる英語力の向上を。
2017年に東京大学教養学部を卒業して伊藤忠商事株式会社に入社した菊田さん。伊藤忠商事は、就活生が選ぶ「就職希望企業ランキング」で常に最上位に輝く超優良企業。社会人として順風満帆のスタートを切ったわけです。ところが、わずか1年10か月という短い期間で転職を決意。新しい就職先は、M&Aアドバイザリー業務で世界トップクラスの独立系投資銀行、株式会社ラザードフレールでした。福利厚生や将来性の観点で安定感抜群の日本の総合商社から、実力主義の外資系企業への転職を決めた理由は何か。その心のうちをお聞きしました。

6期生 菊田(きくた) 真史(まさし)さん
株式会社ラザードフレール アナリスト
(浅野/東京大学教養学部教養学科国際関係論コース卒業)
東大だからといって就活が有利になるわけではない
 就活では、いろいろな企業を受けていました。正直なところ、就活時は確固たる軸はなくて、今振り返ってみると、社会的ステータスなどをオブラートに包んでそれっぽい理由をつくり就活をしていたように思います。それでもその時は必死にいろいろ受けました。総合商社や外資系のコンサル、ベンチャー企業、大きくはこの3つです。最終的には伊藤忠商事に入社しました。就活時にお会いした社員の方がすごく魅力的だったこと、「ここなら実力がつきそう」という直感が働いたことが伊藤忠に決めた一番の理由です。
 東大生だから就活を有利に進められるかといえば、決してそんなことはありません。東大を出ていると、要領の良さみたいなものは担保されているという見方をしてもらえる場合もあるので、外資系のコンサルや投資銀行などは東大ブランドのようなものが多少メリットになるかもしれません。ただ、日系の大企業はある程度大学枠が決まっているケースも少なくなく、就活自体も東大生同士での競争になります。本質的には、どこの大学であれ会社に入ってからの競争になるので、就活だけを考えれば、大学のブランドはあまり関係ないように思いますね。
実力主義の外資系企業でプロフェッショナルになる
 転職理由はいろいろありますが、伊藤忠で外国の企業に投資をするM&A事業を経験した際、一番下っ端だったとはいえ、かなり主体的に働かせてもらえて、その時、M&Aアドバイザリーに興味を持ったのがきっかけです。投資後、事業会社経営を本社側から支援するわけですが、M&Aのディール(売買や取引)というのは、勉強しなければいけない分野が多岐にわたり知的好奇心を刺激される上に、エキサイティングです。次第に「この案件が終わったあともM&Aのディールに従事し続けて、M&Aのプロフェッショナルになりたい」と思うようになり、クロスボーダーM&Aに強い外資の投資銀行に絞って転職先を探し始めました。ですから、伊藤忠が嫌になったということではなく、むしろ伊藤忠で働いてみて、初めて自分のやりたいことが見つかったという感じです。
 新卒で伊藤忠に入ったことはすごく良かったと思っています。面白い人がたくさんいましたし、仕事自体も楽しく、社会人としての基礎を身につけることができました。ただ、商社では会社の方針で、ジェネラリストとして育成されていきます。これには一長一短あります。経営者を目指すのであれば、経理や人事などを含めた様々なノウハウを身につけられるジェネラリスト的なキャリアが役に立ちうる一方、テクニカルなスキルは習得しにくく、「自分はこれだ」という専門性が身につきにくいと思います。私は、「自分のできることはこれだ」と言えるその道のスペシャリストになりたいことに気づき、入社してわずか1年10か月でしたが、思い切って外資系の投資銀行ラザードフレールに転職したんです。
 外資系の投資銀行は日本の商社よりも厳しい環境ですし、実力主義で激務です。それでも私はまだ社会人2年目だったので、勢いで転職したところはありますね。伊藤忠は良い会社でしたので、30歳や35歳で家族もいたら転職していなかったかもしれません。M&Aでプロフェッショナルになりたいという強い思いが、転職の原動力になっていたのは間違いありません。
外資系投資銀行での今の役割
 欧米ではコマーシャルバンクとインベストメントバンクという“2つのbank”に分かれていて、前者はいわゆる日本でイメージされる商業銀行で、後者は、誤解を恐れずにおおざっぱに言ってしまうと、証券会社です。それを一緒にやっているところをユニバーサルバンクといい、ドイツ銀行や、UBS(スイス)などヨーロッパではこの形式が主流です。アメリカでも一部、JPモルガンなどが証券業務と銀行業務を一緒にやっています。ラザードフレールはインベストメントバンクの一種で、M&Aのアドバイザリーに特化した独立系の投資銀行です。
 欧米では、企業も、商品と同じように“誰かの所有物”という考え方がより強く浸透していて、その持ち主が変わるのは自然なことと捉えられているように思います。そして、企業の持ち主が変わる時に起こるのが、mergers and acquisitions(M&A)です。それを、コーポレートファイナンスといわれる分野を軸にしながら、買い手と売り手の交渉などについて様々なアドバイスをするのがM&Aアドバイザリーの業務になります。
 その中には、マネージングディレクター(MD)、ディレクター、ヴァイスプレジデント(VP)、アソシエイト、アナリストという職制のピラミッド構造があって、私は今アナリストとして、企業にプレゼンする資料を作ったり、Excelでファイナンシャルモデリング(企業価値の評価)を行ったりとひたすら手を動かしています。ここからひとつステージを上げるには、まず上の人が、「彼を使いたい」と思うかどうかにかかっているので今は無我夢中です。
日系も外資系も“仕事の本質”は変わらない
 私の職歴だとサンプル数が1対1で、なおかつ、それなりにどちらも特殊な会社ではあると思いますが、日系企業は面倒見が良くて、より家族的な側面が強いと思います。もちろん企業風土によって違いはあるでしょうが、特に伊藤忠はそうした部分が強いかもしれません。ただ、自由度はあまりありませんね。一例を出せば、昼食の時間も基本的に12時から13時までときっちり決まっています。一方、今の会社では、やることをやっていれば時間の使い方は自由です。その分深夜まで働くこともありますけど、こうしなきゃいけないという決まりは少ないように思います。
 私が今いるプロフェッショナルファームのようなところは、熾烈な競争を生き抜いて残っている人ばかりなので、割と生き方に“潔さ”があるのかなと感じています。つまり、「自分はこういうふうに生きていくんだ」というのがある程度定まっている人が多いので、会社が決めたレールの上を走るのではなく、道は切り拓くもの、と考えている大人が多い気がしますね。
 ただ、「自分でオーナーシップをもって働く」という仕事の本質的な部分は、日系、外資系に限らず、今までの短い社会人経験の中で出会った尊敬できる先輩方はみんな同じように言っていました。仕事で自己実現をするためには、オーナーシップをもって働くことが重要ですし、好きな仕事であれば自然とそうなりやすいように思います。オーナーシップをもてば、自分の頭で考えて、工夫し続けられるんじゃないかと思いますね。それは受験生も同じじゃないでしょうか。
グノの英語がなかったら今の仕事はできなかった
 大学時代は、学部の勉強と英語だけは頑張ろうと思っていました。特に留学は必ずしようと思っていました。でも、大学生って頑張ることを見つけるのが案外難しかったです。時間は無限にあるんですけど、その無限にある時間の中で、自分が何に対して投資するのかを見つけるのはなかなか難しかったですね。ですから私は、「留学のために、とりあえず英語を頑張っとくか」みたいな感じだったと思います。
 英語に関しては、グノーブルで中山先生に教えてもらったことがずっと私の中で生きています。英文をそのまま頭から読んで返り読みしないとか、単語の成り立ちから語彙を増やしていくといったやり方は、大学の英語学習でも存分に活かすことができました。英語は本当にグノに感謝していて、グノの英語がなかったら、多分、英語でのメールや電話をたくさんする仕事はできていないと思います。高校時代にすごく伸びましたし、得意科目になって、もっと頑張ろうという気持ちになったのはグノで教わったおかげです。
 そうした土台は、今の仕事でも本当に役立っています。具体例を挙げれば、毎日膨大な量の英語のメールを読むんですけど、英文を頭から読みこなしていくことができないと仕事になりません。日系企業ならそこまでではありませんが、外資系企業だと英語はまさしく公用語になっていて、日系企業とは比較にならないほどたくさん使います。そのおかげで最近では資料作成時、日本語で作ればいい資料でも、英語のほうが出てきやすい頭の回路になってきて、英語と日本語をさほどストレスなく行き来できるようになってきました。
 これは実感として強く思いますが、帰国子女の方でなければ、英語学習の頑張り時になる高2・高3、いわゆる受験期の中で、しっかりとした基礎を固めておくと将来かなり役に立つと思いますね。とはいえ、もちろん大学受験を度外視して考えるわけにはいかないので学び方は重要です。その点グノで勉強していれば大学受験時に英語がアドバンテージになりますし、グノは、将来役立つ英語を伸ばす最良の土台を築ける環境だったと思うので、今グノに通っている皆さん、英語を頑張ってください。
スウェーデン留学で知った自由という不自由
 教養学部の交換留学制度でスウェーデンの大学に留学しました。最初はイギリスやアメリカを申し込んだのですが、その年は優秀な帰国子女の学生がこの2か国に集中して、私はその時帰国子女ほど英語ができなかったし、そもそも志望動機としても強いものがなかったので落ちてしまったんです。ところが2次応募でヨーロッパがあったので、そこでスウェーデンに応募して再チャレンジした結果合格できました。留学の語学基準は、スウェーデンでTOEFL®90点ぐらい、イギリスやアメリカに行くには100点くらいが求められるようです。
 スウェーデンで印象的だったのが、スウェーデン人の友達と話していて、「スウェーデン人はいいよね、自由に何にでもなれるじゃない」と私が言った時のことです。というのも、スウェーデンは社会保障が充実しているので、大学も地元の人だと教育費はかかりません。ですから、生まれた時の家庭環境でハンディキャップが生じることがない。その分、税金が高いんですけど、高福祉で教育もしっかりした社会制度ができていて、就職までのキャリアは平等なんです。つまり、家にお金がないとか、塾に行かせてもらえないとか、そういった家庭環境で将来が制限されることは基本的にありません。ところが、その友達は選択肢がありすぎると逆に迷って困るし、何者にもなれるっていうのはすごい苦しみなんだ、と言っていて「なるほどな」と、少し考えさせられました。
 私を含めグノに通っている生徒たちって、ある程度教育にお金が使えて、それなりに余裕がある家庭が多い傾向にあるはずです。少なくとも「勉強したい」という気持ちが制限されるようなことは少ないんじゃないでしょうか。“格差社会”と言われる今の日本を見渡して、冷静に考えてみれば、それはとても恵まれていることだと気づくはずです。ところがスウェーデンの場合は、それが誰に対しても当てはまるわけです。選択肢が制限されていない分、自分のやりたいことが見つからずに、30歳ぐらいまで大学院に行っている人も多かったですね。これは、スウェーデンだと就職口が日本と比較して少ないという事情もあるんですが。スウェーデンというと高福祉でみんな幸福そうに暮らしているというイメージを持たれているかもしれませんが、税金の高さに文句を言っている人もたくさんいましたし、必ずしもそうでない側面もありました。
仕事も勉強も量をこなさなければ質にならない
 スウェーデンではサステイナブルエコノミーなど、よりリベラリズム的な経済学を学んできましたが、今はかなりそれとは遠いことをやっているなと思いますね(笑)。学生時代に学んだことは社会に出ても、もちろん役に立つこともありますが、それがそのままの人生をトレースするかと言えば、必ずしもそんなことはありません。
 勉強する意味って、社会の行動・思考様式に組み込まれて「当たり前」と考えているものを、批判的というか、相対的に見られるような視座を得ることがひとつの意味だと思うんです。東大の友人でも頭がいいなと感じる人は、いい意味での批判的思考ができる人が多かったです。そういう意味でも大学に入ってから勉強するのは大事です。
 この前、今の会社の研修で1か月半ほどニューヨークに行ったんですけど、アメリカのエリートは大学で死に物狂いで勉強しているんです。私はある程度していたほうだと思いますが、改めて「日本の大学生は本当に勉強しないな」って思いましたね。東大生でもそうです。
 仕事でも勉強でも量をこなさないと質につながらないですし、尊敬できる先輩を見ると、若い頃からがむしゃらに働いている人が多いですね。昔は日系企業でも、同じように働いていたんだと思います。社会全体として働く時間をなるべく減らそうという方向にどんどん舵が切られていて、それに対して間違っているとも思いませんが、個人としては、若いうちになるべく働いてスキルを身につけて、少なくとも会社に依存しないような人材になりたいなと思っています。
 量をこなして成長するために必要なメンタルの部分は、中高のサッカー部で培われた気がします。私の経験からすると、部活と受験勉強の両立はとても大事だと思っています。
 私の場合はスポーツでしたが、それが学校行事でも受験勉強でも自分が必死に頑張れる何かだったらいいと思います。また、そんな学生生活を応援してくれるのもグノの良さだったと思います。先々いい結果がでるかどうかはわかりませんが、ずっとあとになって振り返った時に、「あの時は頑張れたな」と思えるような、原体験をしておくことが大事だと思います。
仕事の英語よりネイティブの雑談のほうが難しい
 将来的にはニューヨークで働いてみたいという思いがあります。なんといっても世界の金融の中心なので。ただ、今年、研修でニューヨークに行って、ネイティブ同士の雑談に全然ついていけなくて、英語力の向上の必要性を改めて実感しました。仕事上の会話なら、共通の文脈が頭の中に入っているので理解はしやすいんです。でも、雑談の場合は断片程度ならわかりますが、完全に理解するのは困難です。文化的な背景を共有していないことが一因にあるんじゃないかと思います。私が高校生の時に日本で、はやっていた歌を外国人がわからないのと一緒で、ある程度文化的背景がある話は難しいです。
 それでも1対1なら相手も手加減して、優しくゆっくり話しかけてくれたり、伝わる英語で話してくれるのですが、ネイティブ同士が複数で話す時は、話すスピードが全然違います。
 ただ、ニューヨーク研修から戻ってきて仕事が楽になりました。研修では、テクニカルなことをみっちり学びました。その時はおぼろげだったことも、戻ってきて実務をこなすうちに「そういうことだったのか!」と、今やっていることの全体像みたいなのが見えやすくなりました。とはいえ、将来的なことを考えれば、何はともあれ英語力のさらなる向上が課題です。なので今、英会話教室に通っています。社会に出ても、英語はずっと勉強しないといけないですね。


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